人事労務トラブルの初期対応について

1 初期対応について

このページでは,人事労務トラブルの初期対応についてお話させていただきます。

人事労務トラブルは,初期対応を間違えると,紛争が拡大することが多々あります。当初は,組織内での小さな問題であったものが大きくなり,どんどん拡大していきます。

人事労務トラブルで最も大切なことは,「風向きが変わる前に対応する」ということです。

この初期対応のところで下手を打ってしまうと,どんどん話が大きくなり,組織内で対応できなくなります。それだけならまだ良いのですが,初期対応の間違えが,裁判での敗訴を招くこともあります。

人事労務の問題については,「風向きが変わる前に対応する」すなわち初期対応がとても重要だということを強調しておきたいと思います。

2 従業員本人からの申し出があった場合

従業員の方が社長または人事部に,クレームを言ってきたということがあった場合,もっとも大事なことは「よく話しを聞く」ということです。

話をよく聞いて,それに対してどう対応するか,どう納得してもらうかという観点を大事にしてください。

この段階で,邪険に扱ってしまうと,その労働者が外に相談に行くすなわち労働組合や弁護士に相談せざるを得ない状況に陥ることになり,これは一番避けるべき状況です。

企業としては,第三者の所に行かないで問題を解決するというのが,一番コストがかかりません。

従業員から上手に話を聞く方法,聞いた後どのように記録に残せば良いのか,実際に会社としてどのように対応すればよいかわからないという企業様は,是非,和歌山県で使用者側の労働問題を専門的に取り扱っている当事務所にご相談ください。

3 従業員の親族に対する対応

これもご経験のある企業様がいらっしゃるかもしれませんが,従業員の方が病気になってしまった,あるいは,ハラスメントを受けた等として,従業員のご両親が会社に電話をしてきて,お宅の会社はどうなっているんだというような苦情を言われたという類型です。

そういった場合の対応も,従業員本人の場合と基本的な対応は変わりません。よく話を聞いて,ご説明申し上げ,納得してもらうための準備をすることです。

4 弁護士から内容証明が届いた場合

労働者の依頼した弁護士から会社に内容証明郵便が届いたということがあるかもしれません。

内容証明郵便の内容としては,例えば,企業である従業員を解雇したケースであれば,この解雇は無効であるので撤回してほしい,撤回しないのであれば解雇理由について速やかに文書で送付してください,といったものです。補足すると,事前に話し合いで解決が可能かどうかについても,この内容証明郵便の中に書いていることもあります。

また,内容証明郵便には,殆ど,○年●月○日までに回答を文書でくださいと書かれています。

企業の側から見ると,一方的に期限を決めてそれまでに回答せよと言われる点について,憤られる方もいらっしゃいます。

ただし,無視し続けていた場合,労働者側の弁護士としては,何らかの法的手続を撮らざるを得ないということで,第三者機関への申立てがなされることがあります。

事案によっては,起業としても,労働者側が弁護士を介入させたうえで,その弁護士との間の話合いで解決できればベストという案件もありますので,何ら検討・対応せずに無視してしまうということは基本的にしない方がよろしいかと思います。

そこで,弁護士から内容証明郵便が届き,社内で対応を検討していて,どんどん時間が経ってしまい,この期限が迫ってきた,ということがよくあります。内容証明郵便に書かれた期限ギリギリになって,駆け込みで相談を受けるということも結構あります。そういったときにどう対応するのかという点については,私の場合は,期限内に,何かしらの回答はする,すなわち,内容証明郵便に書かれているような事項について結論は出ていないが,現在,専門家のなどと検討しているので今しばらくお待ちください,という回答をしておくという対応がオーソドックスかと思われます。

なお,こういった対応をする際は,会社に対応の記録を残すという観点から,書面で対応(郵送,ファックス等)するのがいいと思います。

いずれにしても,労働者が弁護士に依頼し,内容証明郵便を送ってきたという場合は,できるだけ早く,弁護士に相談されることをオススメしています。

5 労働組合から連絡があった場合

和歌山県内では,限られた企業や県や市のケースになるかもしれませんが,労働組合が介入してきたというケースもあります。

概ね,労働組合からは,組合加入通告書,団体交渉要求書,要求書という3点セットが送られてくることが多いです。

送られてくる方法としては,郵送,ファックス,もう1つ,労働組合の方が会社に持ってくるという方法です。

このうち,労働組合の方が会社に持ってきた際には,対応に注意が必要です。具体的には,不用意な発言をしないということです。

労働組合の方が書類を持ってきた際に,団体交渉をやってくれ,ということを伝えます。それに対して,会社の方が動揺や,争いを避けようという心理から,「分かりました」「社長の日程も調整して,団体交渉の日程を調整します」と言ってしまうことがあります。

しかし,実際には,団体交渉には必ずしも社長を出席させる必要はありません。それで実際に団体交渉をやるときに,「やっぱり社長は出ません」ということになると,そこでまず一つ無用な紛争が起きます。労働組合に,「話が違う」となるわけです。

ですので,労働組合の方が3点セットを持ってきた場合,基本的には聞くだけです。あとはまた追って連絡します,というところに留めるようにしてください。

労働組合が入ってきて団体交渉をやる場合は中身も大事ですが,まず対応方法としてどこでやるか,どうやって日程を決めるかという部分が一つ,大事になってきます。

労働組合から届いた団体交渉要求書には,議題,日時,場所,出席者,回答期限が載っています。

この回答期限については,弁護士からの内容証明郵便と同じで,労働組合がなぜ勝手に回答期限を決めるんだということもありますが,無視をするという対応はオススメしません。

ひとまず,労働組合に対し,受領したということ,会社として指定の日時は都合が悪いこと,応対が可能な日時及び場所については速やかにご連絡します,といった返答をしておけばOKかと思います。

それから,団体交渉をやる時には,議題について,会社として事実関係の整理をして,具体的にどういった回答をするのかを準備していかないといけないので当然準備に時間がかかります。

十分な準備をしたうえで臨まないと,団体交渉はほとんどの場合録音されているので,そこでしゃべったことは将来証拠にされます。そのため,不十分な準備のまま団体交渉に臨むというのは将来訴訟のときに敗訴リスクを作りかねないことになります。

団体交渉の場所についてですが。まずは,会社の中でやるということが挙げられます。メリットとしては,お金がかかりません。しかし,個人的には,会社の中でやるということはあまりオススメしていません。なぜなら,労働組合という第三者が会社の中に入ってくるということが,そもそも使用者としていいのか,という理念的な部分に加えて,団体交渉の最中に,会社として,「今手持ちの資料がない部分について後で調べてまた回答します」という対応ができなくなってしまうからです。会社にあるんだから取ってきなよと言われてしまいます。

労働組合の事務所でやるということもありますが,これも費用はかかりませんが,労働組合の事務所の中は相手のテリトリーであり,相手のテリトリーの中で交渉するのはそもそもどうかという部分もあるので,これも基本的にはオススメしません。

個人的なオススメとしては,外の会議室を借りてやるという対応です。外の会議室は会社で手配をして,会社で費用を負担する形でいつも事業主にはお願いしています。外の会議室は借りているので,時間がくれば強制終了として,時間を順守することができます。

希に,団体交渉に先生だけ出てくださいと言われることもありますが,団体交渉は本来使用者がやるべきものであり,弁護士は,立会いをして,法律的なことについて咀嚼して説明する等のサポート役ですので,先生だけ出てと言われても,丁重にお断りしています。

なお,団体交渉とのやり取りについても,面倒くさくても必ず書面で記録に残しながら行うようにしてください。

※その他,団体交渉については,こちらでも詳しく解説しているので参照してください。

6 労働基準監督署から連絡があった場合

労働基準監督署が来る時は,一つは臨検があります。それから,労災申請のときにヒアリングや調査のために来ることがあると思います。基本的にはしっかり資料を整えてどう説明するかが極めて大事です。

なお,例えば,労災の申請がされてその調査で監督署の方々が使用者に,会社の組織図や就業規則など,いろいろなものを出してくださいと依頼をし,会社もそれに対応して資料を提出するという対応をした際に,労基署に出した資料については,必ず控えを残しておいてください。

なぜなら,労基署止まりではなく,弁護士が介入してきたという時に,労基署に出した資料の控えがなくて,会社として手持ちの資料が無くなってしまい,労基署の方に見せてもらうよう頼んだのですが,駄目と言われてしまった会社がありました。

どこか第三者機関に出すもの,出したものについての控えはきちんと取っておく必要があることを認識しておいていただければと思います。

7 労働局(紛争調整委員会)からあっせん開始の連絡があった場合

労働局からあっせん開始の文書,書類が会社に届くということもあります。まず会社として判断すべきは,受けるか受けないかという点です。

あっせん自体は必ず受けなければならないというものではありませんが,無視するという対応はオススメしていません。実際に事案によっては,あっせんの方が,裁判所での解決よりも労働局のあっせんでの解決水準,金額の水準が低いということもあります。

もちろん,あっせんの中で,合意するかどうかは別問題です。中には,難癖を付けるような申立てもあります。そのような場合であっても,会社として紳士的な対応(出席しないにしても,その理由を書面にして提出する等)をしておかれると良いと思います。

また,あっせんは基本的には1回で終わります。一発勝負だと考えておく必要がありますので,準備としては,答弁書という,会社の言い分を書面で出すこと(一発勝負なので,会社の主張をいかにコンパクトにまとめていくかが重要です。),それと,合意で,話合いでまとめる場合,どの程度(どこまでの金額)までであれば合意できるという形で,会社の決済を取っておくことが必要となります。

さらに,大事なのは,労働局が用意する合意書とは別で,別途合意書を用意しておくということです。労働局が用意する合意書では,抜本的な紛争の解決にはならない可能性があります。例えば,本件に関し一切もう何もありませんといった清算条項であれば,本件以外ではまだ何も精算されていないことになってしまいます。

そういった部分もあるので,基本的には合意書を別途作って,局の方にこちらでお願いしたいと言う話をし,駄目ですと意負われたら,労働局のひな形も使いつつ,こちらも一緒に押印させていください,という形でやっております。

人事労務トラブルでお困りの方は当事務所までご相談下さい

当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、「従業員本人からの申し出があった」「弁護士から内容証明が届いた」「労働組合から連絡があった」「労働基準監督署から連絡があった」など、少しでも人事労務トラブルでお困りのことがありましたら、まずはお気軽にご相談・ご予約ください。電話・メール・Chatworkにてご予約を受け付けております。

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