高年齢者雇用安定法改正の要旨

本日は高年齢者雇用に関する法改正概要と実務的な留意点についてお話しします。

第1 高年齢者雇用に関する労働法制度

1 はじめに

2020年、コロナ禍に置いて、人知れず高齢者雇用安定法の法改正が成立し、2021年4月1日から施行されています。

本稿では、わが国の高齢者雇用の仕組みについて少し解説させていただきます

2 高年齢者雇用・定年を巡る歴史について

いわゆる定年制、つまり、一定の年齢になれば雇用が終了するという仕組みを持っている国は、実は日本とアジアの一部しかないことをご存知でしょうか。一般的な雇用形態としては、例えばアメリカであれば、完全に法律違反であって、一定の年齢で差別的取り扱いをすることになるという制度は、普通はありません。

ですので、定年制は、結構特殊な制度と言えるでしょう。

定年制については、1975年頃は、55歳が定年となっていました。それが、1986(昭和61)年に、60歳まで定年努力義務→1990(平成2)年には、65歳までの継続雇用措置を努力義務化し、1994(平成6)年には、60歳を下回る定年が禁止されました。

そして、2004(平成16)年には、65歳までの雇用確保措置が義務化され(ただし、段階的)。2012(平成24)年には、希望者全員の65歳までの雇用確保措置義務が課せられました。つまり65歳まで希望する方は全て企業が雇用確保しなければならず、今でも労使協定での一定経過措置が残っています。これは、いわゆる少子高齢化も含めて企業年金の支払い時期が高齢化していくに沿って、当時は企業にその責任を押しつけるのはけしからん、といった、いろいろな形の議論がなされる中でこういう法改正がなされたという経緯があります。

この、定年制が、60歳から65歳に上がっていくという枠組みは、日本型年功的処遇つまり長期雇用慣行における色自体が大前提になっているといえるでしょう。

3 これまでの高年齢者雇用確保

2020年4月1日施行の高年齢者雇用安定法が始まる前までの、高年齢者雇用制度がどうなっていたのかと言いますと、通常の企業は、定年60歳という企業がほとんどで、
 
  ① 定年を引き上げる
  ② 継続雇用制度を取る
  ③ 定年の定めを廃止する

この3つのいずれかを取ることになっています。

このように、65歳までは、高年齢者雇用確保措置として、雇用を確保することになっています。

現在、70歳までは、「雇用の確保」ではなく、「就業の確保」と言われるようになっています。

まとめると、65歳までは「雇用の確保」、70歳までは「就業の確保」と使い分けることになります。

上述した、3つの選択肢が企業にあるときに、ほとんどの会社は②継続雇用制度の導入、すなわち60歳の定年したままでそれから1年ごとに嘱託社員あるいは契約社員で契約更新していきながら65歳まで雇う形を導入した会社が非常に多いです。

もちろんここで、必ず雇わないといけないのか、継続基準を設けていいのかどうか、ということが問題になってきます

以前は設けることができましたが、現在では労使協定について経過措置があって、63歳以降では基準に満たなかったらもう雇用を更新しないと言うことが一応言える立て付けになっています。

4 高齢者雇用確保措置の実施状況

2019年の6月に出た高齢者の雇用状況についてお伝えしますと、65歳までの雇用確保措置がある企業は99.8%となっています。法律で決まっていますから、ほとんど100%の企業がきちんと対応しているといえ、違法な企業は0.2%と言うことで、平成24年当時からはこの雇用確保義務を果たす企業がほとんどになっています。

その上で、65歳までの雇用確保の内容ですが、継続雇用制度をとっている会社が77.9%、 65歳を定年とした会社は17.2%、定年廃止した企業は2.7%となっています。

継続雇用制度を取っている会社がもっとも多いですが、実は、この制度が入った当時は90%近い会社がこの継続雇用制度をとっていましたので、現在は減ってきているということになります。

逆に65歳を定年とする企業は今次第に増えていっています。以前は数%だったのが、中小企業では17.9%、大企業でも10%の企業が、65歳を定年にするのが今の流れになっています。

さらに、今回の法改正の背景事情にもなりますが、今、少子高齢化の中で、66歳以上の方が働ける制度を持っている企業も少しずつ増えていく状況です。

全員とは言いませんけれども一部でも66歳以上で働ける制度がある会社は30%、しかも中小企業を前提として70歳以上になってもまだ働ける制度入れている会社も28.9%あります。

70歳を超えても働ける方がいるのはこういう制度の仕組みになっているためです。

5 高年齢者(60歳~64歳)の雇用形態

次に、高齢者60歳から64歳までの方の雇用の現状について、JILPT「高年齢者の雇用に関する調査」(令和2年3月31日)を参照すると、65歳以上の雇用形態について、正社員が41%、後は嘱託・契約社員が57.9%、パート・アルバイトが25.1%となっています。

俗にいう非正規社員で定年再雇用後の雇用継続をする会社が、80%以上あると言う仕組みになっています。

60歳から64歳も正社員として雇っている会社が41%と増加傾向にあるのは、65歳まで定年延長している会社が増えていると言うことです。

次に、継続雇用の仕事内容で、定年前と全く同じ仕事は44%、同じ仕事であるが責任の重さが軽くなるのが38%、全く異なるのは6.1%となっています。

全く同じ仕事だとしても、少なくとも責任の重さは絶対変えなければいけないと言うのは私自身が、クライアントに常々申し上げているところでして、その理由については、別のところでお話ししていきたいと思います。

少なくとも、定年前と責任も仕事内容も全く同じという会社がまだ44%があるのはやや由々しき自体ではないかと思っています。もちろん、定年前と全く同じ賃金を払うのであれば全く問題ありませんが、賃金を下げる等、労働条件を変更しながら、責任も役割も同じにしているところは、今後、いろいろ紛争対応が生じる、あるいは今回の法改正等々で対応しているときにネックになるかもしれないと考えています。

6 まとめ

以上、定年と言う年齢で雇用を終了すると言うこと自体が、やや国際的から見て特殊であるということ、さらに60歳になってそれ以降、(平成24年から)65歳までが雇用確保措置つまり努力義務ではなく、確保義務になっていると言うこと、また3つの選択肢があり、そのうち、継続雇用と言う制度をとっている会社がほとんどでしたが、次第に65歳まで定年を伸ばす会社が増えている現場があるということをお話ししました。

その上でこの少子高齢化の中、わが国は労働力人口が非常に減っていく現状があります。もちろんコロナの関係でまた状況が変わるかもしれませんが、少なくとも政策的な要請としてはこの労働力人口を補うために、高齢者についても処遇を確保しながら雇用維持すべきではないか、ないしは就業できる状況を作るべきではないかと言うことで、新しい法律が2020年の3月に成立しています。それが次項で述べる、高年齢者雇用安定法の改正についてです。

第2 高年齢者雇用安定法の改正について

1 高年齢者雇用安定法

改正された高年齢者雇用安定法は、2020年3月31日に法改正がなされ、2021年4月1日から施行されています。

今回の法改正は65歳以上70歳までについて企業事業主に、就業機会の確保について、次に述べるいずれかの措置を講ずる努力義務が課せられました。

この努力義務と言うところが、雇用確保措置義務(61歳~64歳)と違っています。

つまり65歳までと違っていて70歳までは努力義務になっています。これを、「高年齢者就業確保措置」と呼びます。

そういう意味では文言の使い方が違ってきていると認識する必要があります。65歳までは雇用確保義務、65歳から70歳までを「就業確保義務」と言う呼び方がされて、就業確保義務は努力義務と言うことになっています。

努力義務ですから、要は「努力しています」と言えればいい、と法律的にはなっていますが、歴史を見ても、間違いなく近い将来、措置義務に変わります

ですから、早い段階で企業は措置義務に変わることを想定して対応していかないといけないと言うことをご理解いただければと思います。

2 やるべきこと(措置の内容)

  ① 70歳までの定年引上げ
  ② 70歳までの継続雇用制度の導入(65歳以上継続雇用制度)
    「他の事業主への就職」も対象拡大(現行は「特殊関係事業主」限定)
  ③ 定年廃止
  ④ 70歳までに継続的に業務委託契約等を締結する制度の導入
  ⑤ 70歳まで継続的に事業主が自ら実施する/委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献
   事業に従事できる制度の導入
※雇用以外の措置(④と⑤を総称して、「創業支援等措置」)には、労使同意と高齢者が希望していることが要件。

3 ①~③について

やるべき事は全部で5つありますが、①~③の3つの内容は65歳までの雇用確保義務とほぼ一緒です。いわゆる70歳までの定年引上げ、あるいは、70歳までの継続雇用制度の導入、これを「65歳以上継続雇用制度」と名称して、「継続雇用制度」とは分けます。

今までの継続雇用制度とは違って、65歳以上継続雇用制度が入ります。

あるいは定年制を廃止するか、この3つのうちのいずれかを取る努力義務が課せられます。

どこが違うかと言うと、継続雇用制度です。まず1つは、他の事業主の就職でも構いません。要するに、関連会社子会社で就職してもらうことも継続雇用制度の1つです。これは65歳の雇用確保義務の時にもありましたが、その時は特殊関係事業主としてのグループ企業のみが60歳から65歳までの就業確保先となりましたが、今回は別にグループ企業でなくとも、取引先でも何でも構いません。もちろん、そことの間に契約があって、つまりA社と言う取引先と継続雇用制度の対象先になう契約があって、そこに継続的に移すといった制度も、この継続雇用制度として放り込むことができます。そういう意味で、現行の特殊関係事業主限定から少し拡大されています。

もう一つは、今までは全員の確保措置義務がありましたが、今回は対象者をある程度絞ることが理論的にはできます。もちろん希望者全員65歳まで継続雇用することが望ましいことは疑いようがないですが、一定の基準を設ける事は一応理論的には可能になっています。

4 ④と⑤について

①~③であれば、高年齢者のいわゆる雇用確保措置と同じですが、それ以外の④、⑤が新たに付け加わりました。

これは何かと言うと、④継続的に業務委託契約等を締結する制度の導入です。早い話が、個人事業主として業務をやってもらって、そこに仕事を発注する。要するに、雇用はしないけれども業務を委託して仕事を振る、と言う形の契約を取るということ。これが業務委託契約等の導入です。

さらには⑤継続的に事業主が自ら実施する社会貢献事業です。あるいは、自らやっていなくても、委託、出資している社会貢献事業に従事できる制度の導入です。早い話が、自分の会社で雇用することだけが確保義務ではなくて、他の所で70歳まで働くことができる枠組みを作ってあげなさいと言う仕組みになっています。

なぜこうなるかと言うと、確かに労働力人口が少なくなっているので働き手として必要と言う企業は、当然70歳になろうが雇用していくわけですが、やはり新卒を取りたいとか、雇用を流動化させたいと言う会社は、70歳まで雇用するのは社会保険の関係でも負担だと、そうだとすれば、とにかく他社ででも、雇用先をきちんと見つけてあげると言うことで努力義務を果たすことを理屈として許しましょうと言うのがこの制度趣旨の枠組みだと思います。

ただ、この④と⑤は、65歳まで雇用していた人を突然、社会に放り出して、個人事業主として仕事を振ると言う事ですから、当然、労働者側の団体や学者からすると、いわゆる労働法で保護されている保障はどうなるか、と言うことでかなり強い批判が出ましたし、想定されました。そういうこともあって、実はこの④と⑤は、雇用以外の措置、創業支援等措置と呼びますが、創業支援等措置は労使同意+高年齢者が希望しないといけないと言う要件が付け加えられました。

労使の同意、具体的に言うと、計画書を作って、それに労使の過半数代表者が押印しているといった労使同意があった上で、当該その高年齢者が希望しない限り、この④、⑤は使えないと言う制度設計の仕組みです。

そういう意味で、これは非常に中途半端な制度になっているといえ、額面通りに受け止めて、額面通りにこれを活用する会社はかなり少ないのではないか、もっと言うと、労使合意や高年齢者希望など創業支援等措置は新たな制度なので結構仕組みが大変です。端的に言うと、企業としては非常に面倒くさいので、おそらく一般的な企業は①から③のいずれか、おそらく②の継続雇用制度を選択しつつ、来るべき場合に備えて、あるいは、どうしても継続雇用できない人の場合に備えて、④、⑤を並行的に制度として設けると言う会社が今後多くなるのではないかと思っています。

もちろん、そうすれば、その会社は努力義務と言う枠組みではもう②を果たしているので、合法になります。

②をきちんと果たして、④、⑤はその細かい仕組みに応じてやらなくても、特に違法だと言われる余地はありません。

他方、この制度だけを使って高年齢者就業確保措置をとっている、と言おうとすると、なかなか悩ましい制度ではないかと個人的には思っています。

いずれにせよ努力義務ですから、今現在、直ちにこれをやる必要はありませんが、遅かれ早かれ今後は義務に変わっていく可能性が高いですから、もう今のうちから考えておくべきだろう思います。

個人的にも、②を放り込みながら④や⑤をうまく使うようにアレンジをしながら進めていく企業が増えていくのではないかと思っています。

5 創業支援等措置について

創業支援等措置について、もう少し細かい中身を見ていきたいと思います。

一番気になるのは、創業支援等措置とは一体何かと言うことです。

規則には、「事業主が創業支援等措置を講ずる計画において、当該措置の実施に関する計画を作成し、当該計画について過半数労働組合等の同意を得ることとする。また、当該計画について記載すべき事項及び当該計画を労働者に周知する方法を定めることとする」と記載されています。

この規則案を見る限り、事業主が創業支援等措置を講じるにあたっては、その実施に関する計画書をまず作成し、それに対して過半数労働組合あるいは過半数代表者の同意を得ましょうということで、同意を得た上で、それを労働者に周知する方法をきちんと定めておく。

「当社では、こういう個人事業主になってもらって、そこにはこういう風に仕事をすると振る」という計画をきちんと立てましょうと言うことになっています。

  ① 創業高年齢者等と継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
    個人とのフリーランス契約への資金提供/個人の起業支援
  ② 個人の社会貢献活動参加への資金提供(有償)
    ア 事業主が自ら実施する事業
    イ 事業主が委託、出資(資金提供)その他の援助を行う団体が実施する事業(有償)

①は、創業高年齢者らと継続的に業務委託を提携する制度を導入するというものです。高年齢者らと、個人としてのフリーランス契約をして、資金提供するとか、企業支援をするということが求められています。

まだまだ実務での運用はこれからということになるのでしょうが、この方法の場合、私見としては、70歳までの収入を確保措置ですから、この個人事業主となったAさん、つまり、65歳まで会社で働いてくれたAさんは65歳で定年となるので、会社としての雇用は65歳で終了となるので、65歳からは個人事業主でやってください、と言ったとしても、とにかくその人が70の年齢になるまでは、一定の仕事を発注し続けなければならないと解釈できます。

そうなると、会社としても、その5年間、取り扱う製品等の変化、経営状況の変化も当然出てくる可能性はあるにもかかわらず、とにかくその5年間は仕事を振り続けなければならないとなると、会社としてもかなり重たい負担となり得るのではないかと考えています。

②個人の社会貢献活動参加への資金提供です。事業主が自ら実施する事業や委託、出資している事業に参加することに対して、資金を提供するということまでやる、というものです。

この2つのいずれかを就業確保措置の選択肢として、今回挙げられました。

繰り返しになりますが、これらをやろうとした場合、契約書等を作り、過半数代表者の同意をもらい、周知し、かつ希望者しかダメと言う立て付けになっています。

後は細かいことですが、65歳以上の定年制を設けている事業主であったとしても、70歳未満の定年制であれば、当然この就業確保措置を取らないといけません。

といっても、努力義務ですから努力をしないといけないということです。

なお、新たに事業を開始する場合に限定されています。すなわち、シルバー人材センターなどが実施している就業機会の提供はこれに含まれません(要するに、自社の高齢者をシルバー人材センターに登録させて、そのセンターに仕事を振るとか、そこから仕事をもらいなさい、と言うことは、この就業確保支援措置に当たらないと言われています。

また、規則には、創業支援等措置実施計画記載事項ということで、①から⑫まで、記載されています。

契約書のひな形も記載されています。

6 就業確保措置に関する指導・助言・勧告

就業確保措置に関する指導・助言・勧告についてご説明します。

今回の高年齢者雇用安定法の改正は、雇用ではなく、就業確保措置かつ努力義務ではありますが、実は、厚生労働大臣は、この就業確保措置の実施について必要な指導や助言を行うことができるし、作成について勧告をすることができるということになっています。

「厚生労働大臣」となっていますが、実際には労働局だと思いますが、就業確保措置について必要な指導や助言をする、あるいは、会社が計画を出したら、それに対しても勧告をすることができるとなっています。

単なる指導や助言は、法律的に言うと行政指導であり、行政処分ではありませんが、いかなる意味でもそれによって企業が直接に不利益を被るという事は通常はありません。

7 再就職援助措置、多数離職の届出

また、今回の法改正では、70歳未満で退職する高年齢者が希望した場合の、事業主の再就職援助措置を講ずる努力義務が規定されています。

70歳未満で退職する高年齢者とは、定年及び事業主都合により離職する高年齢者等(再就職援助対象高年齢者)のことを言います。

また、再就職援助措置とは、例えば、教育訓練の受講等のための休暇付与、求職活動に対する経済的支援、再就職のあっせん、教育訓練受講等のあっせん、再就職支援体制の構築などを言います。

また、同様に、同一の事業所に於いて、1月以内の期間に5人以上の高年齢者等が解雇等により離職する場合の、離職者数や当該高年齢者等に関する情報等の公共職業安定所長への届出、といった制度も規定されています。

これらの再就職援助措置や多数離職の届出の対象者に、65歳以上の人も含まれるようになったということです。

8 雇用状況の届出義務

雇用状況の届出義務についてです。雇用状況の届出義務も、従前からありましたが、届け出る範囲等が変わってきたので、毎年1回、定年及び継続雇用の状況その他、高齢者の雇用に関する状況を報告するということになりました。

基本的には全事業所が対象になっていますが、労働局の運用としては、31人以上の労働者がいる事業所に用紙を配布しているようです。

今年からは大体20人以上の事業所に送付する予定だと言うことです。書いて送ることになっているだけで、出さないと刑罰をくらうことにはなりませんが、仮に提出した中で、法律上の65歳までの雇用確保措置が果たせていないと言うことになれば、おそらく勧告が出され、勧告にも違反すると言うことになれば、企業名公表もあり得ると考えています。

9 高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針について

指針そのものはこちらを参照下さい。ここでは、重要なポイントについていくつかご紹介します。

1つ目、「高年齢者就業確保措置」の部分です。いわゆる高齢者就業確保措置を取らないといけない事業主は誰か、ということが特殊関係事業主に雇用をさせているケースでは問題になります。

例えば、わが社では60歳定年になった後、65歳までの雇用確保措置を特定関係事業主つまり子会社のA社で雇っている、あるいは子会社のA社で65歳以上は継続雇用措置として雇っている、という場合に、この方が65歳になった時に、そこからの就業確保措置をとるのは、当社なのか、A社なのか、というパターンです。

このことについて、原則として、当該高年齢者を定年まで雇用した事業主が高齢者高年齢者執行確保措置を講ずることと書いてあるので、いわゆるわが社で60歳まで働き、そこから子会社のA社に、特定関係事業主として65歳まで継続雇用したケースでは、65歳から70歳までの就業確保措置をとるのは、基本的にはわが社と言うことになります。ただ、就業確保措置の内容として、A社で継続雇用することでももちろん構いません。

そういう意味では、あまりこの議論の意味があるとは思えません。

もちろん例外もあって、特に労働者の保護に問題がないケースであれば、特定関係事業主が就業確保措置をとっても構わない、契約書上、そうしても良いと指針には書かれています。

2つ目、ここが重要なところで、希望者全員ではなく、対象者を限定することができることになっています。

65歳までの雇用確保措置は、もちろん、希望者全員です。経過措置の労使協定は置いておくとして、希望者全員という事でしたが、70歳までの就業確保措置は対象者を限定できる制度になっています。

どう限定するのかすなわち対象者の基準をどう定めるのかは、労使協定になるのか、就業規則になるのか、まだこれからの議論になっていくと思われます。

もっとも、労使間で十分な協議を行う、事業主が恣意的に高齢者を排除しようとするようなもの、法令違反、公序良俗違反といったものが認められないことは当然です。

次に、65歳以上継続雇用制度について、他の事業主によって雇用を確保しようとするときは、その事業者との間で契約締結が必要だと言われています。ですから、65歳になる人が勝手に親戚の会社で65歳以上になるまで勤めました、と言うことで、それが就業確保措置をとっていると言えるかというとそうではなく、事業主が、その会社ときちんと契約を結ばないといけないと言う枠組みになっています。

後は、心身の故障のため業務に耐えられないとか、従業員としての職責を果たしえない場合は、解雇したり、退職したり、継続雇用しないことが可能というのは、今の65歳雇用確保措置と同じことが書かれています。

また、創業支援等措置についても、指針が出ています。

社会貢献事業を実施する者との間で契約を締結する必要がある、事業に従事する機会を提供することを締結する必要がある、さらにこの社会貢献事業は、不特定多数に対する社会貢献事業でないといけないので、特定または少数者の利益に資することを目的とした事業は対象とならないと言われています。

これも実務上、どんなものが良くて、どんなものが悪いのか、今後積み重ねられていくものと思われます。

また、雇用時における業務と、内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせることは、法の趣旨に反すると書かれており、厚生労働省はダメだと考えることになっています。

さらに、当該高年齢者に対して実施計画を記載した書面を交付するとともに、創業支援等措置による就業は労働関係法令による労働者保護が及ばないことから、実施計画に記載する事項について定めたうえで、それについてきちんと丁寧に説明して、納得を得る努力をしなさい、ということが当然指針には書かれています。

これを見ても、やはり、この創業支援措置は結構仕組みが面倒になっていて、これ1本でやるよりは、①から③と並行してやった方が良いのではないかと言うのは先ほどの繰り返しです

まとめ

以上、高年齢者雇用確保措置についてお話ししました。いわゆる通達や細かい解釈論はまだ今後発展していくことになるでしょうが、何より既に今年(2021年)の4月1日から施行されています。

今はまだ努力義務ですから、直ちに就業規則を変える必要はないかもしれませんが、完全な義務になってから対応しようとすると、バタバタしてしまい、上手くいかない可能性の方が高いと思われます。

是非、会社の現状を踏まえて、使用者側の労働問題に精通した弁護士や社労士の先生に、一度相談してみてください。

当事務所でも高年齢者雇用法に関するご相談を受け付けております。初回相談料を無料とさせていただいていますので、高年齢者雇用安定法以外のことでも構いませんので、少しでも人事労務トラブルでお困りのことがありましたら、まずはお気軽にご相談・ご予約ください。電話・メール・Chatworkにてご予約を受け付けております。

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